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 yanaimasaru 2008.9.30(火)
『おおー!来てくれたんだー。サンキュー!』
日曜日の状況から考えて、いきなり話しかけられるとは思っていなかった。涙が出そうになったけど、がまんした。
「サンキューじゃないだろうよー。脅かすなよー。マジ驚いたよ。」
『いやー、ホント記憶がぶっ飛んでてさー。』
「やっぱ、そうなのかー。じゃ、日曜日に俺とかウチの実家の連中が来てたのって、覚えてないの?」
『あー、覚えてないや。でも、福島がどうこうって言ってる感じはしてたな。』
「そうなんだ。枝子おばさんとか、すごいうるさかったのに全然?」
『あー、やっぱりか〜。後で怒られるんだよなー。』
「あー、そりゃなー。おとなしく謝って、嵐が通り過ぎるの待つしかねーよ。」
『そうだろうな〜』
「あ、お土産持ってきたよ。YMOのベスト版らしいよ、コレ」
『え、何々。ちょっと見せて。』
「小学校以来じゃね?YMOなんてさ。」
『おー、ホントだ。聴かせてもらうよ。』
「いやー意識なかったからさー。ずっとストレイ・キャッツとかだけじゃ飽きるかと思ってさー。」
CDのパッケージをしげしげと見ている。
「じゃ、あんまし長いと疲れるからさ、そろそろ行くわ。」
『あ、うん。ありがとう。それと叔父さんと叔母さんにもお礼を言っておいて。』
「うん、わかった。言っとくわ。」
『あとミキがすごい心配してたって聞いたから、ミキちゃんにも電話してもらえる?』
「OK、OK、わかった。」
『じゃ、また。』
「おー、また。」
『ホントありがとう。』
「うん、またね。」

驚異の回復力。。。。うれしくて、ちょっと泣いた。

帰り際、握った手をなかなか離さなかった。
 yanaimasaru 2008.9.29(月)
彼の友人が、意識はなくても音楽は聞こえるかもしれないと言って、ベッドサイドにCDプレイヤーを置いてくれていた。彼がよく聴いていたのはロックンロールとかロカビリーとからしい。
小学生の頃、矢内勝も俺もよく聴いていたYMOのCDを買った。ある意味、自分の意志で音楽を聴くという行動の原点になったアーティストだ。
 yanaimasaru 2008.9.28(日)
矢内勝のお見舞いに行った。
意識がないくせに、呼んだら何かを必死に話す。
声も出ない状態で、何か必死に口を動かし、俺を見る。
何を言おうとしているのかはわからない。
でも、とにかく何かを必死で伝えようとしている。

わかった。
何を伝えたいのかは、わからないが、何かを理解できた気がした。
俺は「うん、うん」と2回うなずいた。
本当に?
と念を押すように見られた気がした。
俺にできることをしようと思った。
病室から見える空は白くて曇ってて。

こんな日に東北新幹線が止まりやがった。
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